オーバーツーリズムについて思うこと

NHKワールドを覗いていたら、「Tourist Sites Tackle “Overtourism”」(観光地のオーバーツーリズムへの取り組み)という記事が目につきました。オーバーツーリズム(overtourism)?何やら最近できたの言葉のようですが、旅行好きとしてはちょっと気になります。

オーバーツーリズムとは?

二年ほど前から使われるようになったというこのオーバーツーリズムという言葉。簡単に言えば「観光客が来てくれるのは地域経済にとってはありがたいけど、たくさん来過ぎ~!どこもかしこも旅行者だらけで混みすぎて、住民が暮しにくくて困ってしまう。勘弁して~!」という状態のことです。

もはや「来てくれてありがとう!」なんていっている場合ではないようです。

京都の現状

日本に来る外国人観光客が必ず訪れるところといえば、何といっても京都です。これは以前から変わらないのですが、近年は旅行客の数が激増。

毎年秋に京都探検に行く友人によれば、京都の町には着物(もどき?)を着た外国人観光客がたくさん歩いているのだとか。外国人観光客の皆さんは、京都と着物を一緒に楽しんでいるのでしょう。

京都は観光地ですから観光客に来てもらわなければなりません。しかしお客さんの数が多すぎて、京都ではさばき切れないのが問題なのです。

交通渋滞、バスの混雑や騒音問題などで、住民は心穏やかではありません。

バスが混んでいてなかなか乗れないとか、民宿に泊まる外国人旅行者による夜中の騒音問題など、住民の日常生活に支障をきたしているのです。

「落ち着いた古都」の雰囲気は、ここ10年ほどで激変しているようですね。

観光の分散を推進

このような状態を何とか緩和すべく、京都市は「観光の分散」を勧めています。時期や時間をずらしたり、有名どころ以外にも足を運ぶことを勧めているのです。そうすることで観光客を分散して、混雑の緩和を図るというわけです。

実際には二条城などのようにオープンを早め、そのうえ予約制で朝食を提供する工夫をしているところもあります。これが人気で連日満席だとか。空いていてゆっくり見学できるのが良いのでしょう。

ただしこれが評判で早朝観光が広まれば、これまた「早朝混雑」と化すのではないかと心配するのは私だけかな?

オーバーツーリズムに泣く海外の有名観光地

何も京都だけがオーバーツーリズムに悩んでいるわけではありません。世界の有名観光地でも増え過ぎた観光客に住民たちが頭を悩ませているのです。

イタリアのヴェニス、スペインのバルセロナ、オランダのアムステルダム、そしてフィリピンのボラカイ島などです。

観光客締め出しの住民デモが起きたり、住民が引っ越しをしたりするケースもあるとか。またボラカイ島のように美しい海が汚染されるという環境破壊も発生しています。観光客が出すゴミなどが原因です。深刻な問題ですね。

観光客増加の理由

このように観光客が世界的に増加したことには、大きな要因がいくつか考えられます。

そのひとつは、発展途上国の経済発展により、その国の中産階級の人たちが海外旅行に出かけるようになったことです。これ自体は喜ばしいことではないでしょうか。海外旅行は先進国に住む人だけの特権ではないはずです。

もうひとつは格安航空会社(LCC)が出現したこと。これにより多くの人が気軽に海外に出かけることができるようになりました。飛行機は今やバス並みに容易に利用できる時代になりつつあります。

ただし私のような地方在住者にとっては、空港まで行くには時間とお金がかかりますが。

でもやっぱり旅行はしたい

オーバーツーリズムが深刻な問題化しているのはよくわかります。ただね、じゃ~海外旅行はやらない方が良いんだ、なんてことにはならないでしょう。

観光関係の各業界が廃業となりますし、なんといっても旅行の楽しみを奪われる旅好きの人たちにとっては、大きな楽しみが奪われることになります。

たった年に一度の海外旅行が楽しみで、日々働いている人も多いのではないでしょうか。会社員時代の私などは、3年に2回くらいの海外旅行を、それは楽しみにしていたものです。飴玉をぶら下げるがごとく、旅行を前にぶら下げておくと仕事も頑張ることができます。

くれぐれも国連が旅行禁止令なんてものを出しませんように・・・。

誰だって美しいものは見たいけれど

京都の桜や紅葉の美しい風景が載った雑誌やパンフレットを見れば、京都を訪れたくなる外国人が多いはず。

またゴンドラに揺られながらベニスの風景を眺める、バルセロナではやっぱりあのサグラダファミリアを見てみたい、ボラカイ島の美しい海で楽しみたい、など多くの人の思いは共通していることでしょう。

「良かった、すごい、絶景だった!」と聞けば、旅好きならば、自分でも見てみたくなるのが普通です。だから有名観光地を訪れることは否定できません。

ただし・・・観光地の自然や町の環境そのものを破壊することになれば、「旅行は楽しい~」などとのんきなことを言ってはいられません。「訪問する側」も「訪問される側」も心地よい状態を維持できることが大切です。

シーズン中は観光客の受け入れ数を制限することも、ある程度必要になるかも知れませんね。

人の集団から離れるために

世界のあちらこちらで問題となっているこのオーバーツーリズム。その問題を少しでも緩和するために協力できることは、「大勢に乗っからない」ということになるでしょう。

京都市も推進しているように、シーズンを外しての旅行を楽しむこと。またマイナーな場所に行ってみるとか。ただし安全な所に限りますけれどね。

何も若いバックパッカーではなくても、高齢者は高齢者なりのマイナーな場所があります。

例えば中心地からバスで少し行った小さな町や村とかね。それならば大きな町からは、けっこう頻繁にバスがありますから便利です。ゆったりとした気分で街歩きが楽しめるはずです(世界遺産やショッピング狙いの場合を除いて)。

私などヨーロッパ方面の旅行に関しては、「花が美しい風景」よりも「木枯らし吹くガラガラの街の風景」に出会うことがほとんど。というのもお財布事情も含めて、航空券が安い晩秋からが私の旅行シーズンだからです(南半球は別)。

おまけに人混みが大嫌いな性分でして、いくら美しい景色でも混雑しているところは極力避けたいのです。これじゃいつまでたっても「美しい景色」を堪能することはできないじゃないか、といわれそうですが、それでも本人はご機嫌。

どのシーズンに行ってもその国はその国。たとえば春や秋でなくても京都は京都というようにね。

毎日の生活圏から離れ、同じ地球上にある他の場所にちょっとだけ身を置いて楽しんでみるのが海外旅行だと思います。「旬の現地」を楽しみます。

とかく旅行者は楽しむことに夢中ですが、現地の人たちにとってはいつもの生活圏。そこのところを忘れずに、楽しい旅行をしたいものです。

オーバーツーリズムについてのひとり言でした。