隣席の人間模様

飛行機で偶然隣り合わせになった見知らぬお方。軽い挨拶くらいはするものの、取り立ててお話しすることはありませんよね、普通。それでもふとした会話がきっかけで、その後いろいろと話し続けることも時にはあるものです。今回は、私がこれまでで特に印象に残ったお隣さんについてのお話です。皆さん個性派ぞろい!

話好きなお姉さまと楽しく

成田発コペンハーゲン行きの機内でした。飛行機はスカンジナビア航空。この日のお隣さんは、ツアーでイタリア方面へ向かう(確か)という東京からのご夫妻。奥様が気さくな方で、あれこれと楽しくお話していたら、いつのまにかコペンハーゲンに到着。12時間の飛行時間もあっという間でした。

このご夫婦とそのお友達らしきお姉さま方は、格安のツアーを見つけては、毎月のように海外旅行にお出かけのようでした。皆さん関東にお住いのこともあり、気軽にお出かけになるのでしょう。

添乗員とのやり取りを見ていると、この方たちは常連さんの模様。ツアーですから全部お任せということもあってか、余裕のある方ならば、毎月のように飛べるというわけです。いいな~。

ひとりの方に「コペンハーゲンからどこに行かれるのですか?」とお尋ねしたら、「わかんな~い!」と元気なお応えが(笑)。正直驚きましたが、でもそんなものかも。添乗員付きのツアーですから、皆さんすっかり安心して楽しそう。

こういう旅行もあるのだと知りました。ツアーであれ個人であれ、安全で楽しい旅行ができたらそれでよし!ですもんね。

音楽家とウィーンへ

晩秋のウィーンへ行ったときのことです。成田発のウィーン行のオーストリア航空。お隣は若い女性二人。私たちは特にことばを交わすことなくしばらく過ごしました。

しかしふとした会話がきっかけで、お互いの空気が和らぎ、おしゃべりがスタート。何と彼女たちは、ひとりがバイオリニストもうひとりはピアニストだったのです。

そういえばすぐ隣席の彼女はバイオリンらしきものを上の荷物入れに入れていましたっけ。バイオリンもピアノも全く縁のない私ですが、自分が「音楽の都ウィーン」に行くのだという実感が湧いてきたのを覚えています。

彼女たちは、ポーランドで演奏会を行うのだとか。普通ならばすぐにゲームをやり始めるような年頃でしたが、彼女たちはまったくスクリーンに興味を示さず。きっと毎日練習にあけくれているので、ゲームなんてしたことがないのかも。音楽を生業とする世界のこともちょとだけ聞くことができ、なかなか有意義なウィーンまでの飛行時間でした。

巨大君&相方君

プラハに向けて出発した時のことです。これまた成田発ウィーン行のオーストリア航空。搭乗前のゲートにいると、巨大な若い男性の姿が目に飛び込んできました。私は内心、絶対に彼の隣にはなりたくないと思いました、窮屈だもの。

あのときの私は、ウィーンからプラハ行の乗り継ぎ時間がかなり短かったので、チェックイン担当のお姉さんには「限りなく出口に近い席」をリクエスト。

機内に入ると、私の席はスクリーン前の席(4席並び)。それはいいのですが、運命のいたずらか・・・何とあの巨大君&相方君と同じ列ではないですか!ただし私のすぐ隣が空席だったのが幸い。実際にはこの存在感バッチリ!の青年たちはとても気さくな方たちで、楽しいフライトとなりました。

ところで巨大君は、機内食のときにはもう1席使用。というのも彼の巨大なお腹が邪魔をして自分の席のテーブルが使えないのです。そこで隣席のお供君のテーブルに機内食をのせて食べるというわけです。そしてお供君は速やかに私の隣の空席に移動。二人とも慣れた感じの動きです。

相方君によれば、巨大君はイタリア滞在経験があり、イタリア語も堪能なのだとか。わからないものです。こちらは彼の巨大な体に圧倒されてばかりでしたが、当然巨大君にも歴史があるわけですもんね。何年もたった今でも、あの大きなお腹は健在かな?

イケメン×2+修行

成田からドバイ経由でマンチェスターまで行きました。エミレーツ航空です。

まず成田→ドバイでの隣席は、アラブ系の感じの良いイケメン君。おとなしい青年と一緒に心穏やかにドバイまで。その後のドバイ→マンチェスターの隣席の方については記憶ゼロ。

帰路のマンチャスター→ドバイ間のお隣さんは、インド系の爽やかなイケメン君。銀行マンだとか。今回はイケメン君にご縁があるものだとご機嫌な私。ところが神様はそう甘くはなかったのです。というのは、最後のドバイ→成田間では想定外の結果が待っていたからです。

成田行きは、最後尾の二人掛け席の通路側を事前指定。以前他の航空会社で同じ席に座ったら、気楽で良かったからです。でも今回はそれがあだに・・・。

離陸近くになっても隣席は空席のまま。やった~という気分でした。ところが最後の最後に突然現れた巨人!大きなアラブ系の中年男性。おまけに機内持ち込みサイズをはるかに超えた大荷物を抱えて乗り込んできたではありませんか。もちろん私はがっかり。またイケメン君の隣かな~などと期待していた私がバカでした、ほんと。

その巨大な乗客は窓側の席に座りましたが、何しろ大きいので腕が私の腕と接触、というよりも完全に私の領域にくい込んできます。彼自身が一番辛いとは思いました。狭いスペースで身動きが取れない状態ですからね。おとなしい方でしたが、ゴホンゴホンとしきりに咳をしていたのがちょっと・・・。じっと修行の10時間。ちなみにその男性は、一度もトイレに立ちませんでした。すごい!

それにしてもあれほどの巨大な乗客をエコノミーに乗せるなんて、「エミレーツ、これはないだろう!」と叫びたい気分でした。その乗客ご本人にとっても大変なフライトになるはずだから。空いていれば私を他の席に移動させても良かったのに。

飛行機マニアの弾丸女子旅

スロベニアに行くために成田から乗ったトルコ航空。お隣さんは日本人女性。初めから挨拶をしたりと、何気に会話をしていました。ふと彼女を見ると、スクリーンをいろいろ操作したり、写真をしきりに撮っているではありませんか。彼女は飛行機マニアだったのです。

きるだけ違う飛行機に乗りたいために、乗り継ぎも含めて全区間違う航空会社を使うのだとか。そのうえ「日本人があまり行かないところ」へ行きたいそうで、このときもアルバニアとギリシャのある島に行くといっていました。それもわずか数日(確か3泊くらい?)の弾丸旅行ですが、「それでいいんです!」と彼女。

なかなか個性的で興味深い女性でした。いろんな旅行の仕方があるものだとつくづく思いましたね。

たまたま飛行機の隣席にならなかったら、知ることがなかったであろう人たち。話をしてみると、みなさん自分とは全く違う世界で生きていて、同時に向こうから見たら私自身も違う世界に生きていることになるわけです。おもしろいですね。

あなたの隣席には、あなたと全く違う環境で生きている人がいるかも知れません。もし許される雰囲気ならば、ちょっと声をかけてみてはどうでしょうか。興味深い話が聞けるかもしれませんよ。ただし、一方的に話し過ぎるのは禁物。嫌われるからね(笑)。ほど良い会話ということで・・・。
Have a nice flight!