人の心~キプロスで出会った人

先月のキプロスの旅では、ドライブ中の現地の女性3人と出会いました。正式には現地の女性2人とイスラエル人の女性1人です。

そのイスラエル人女性(80代前半)との会話で深く考えさせられたことがありました・・・アウシュビッツのことです。

リゾート地アヤナパでひょんなことからドライブに加えていただいたけれど、その車の運転担当がイスラエル人女性。4人の中で最年長の彼女に運転させて、後のメンバー(私を含む)は助手席と後部席でにぎやかにおしゃべり。

彼女は弁護士。エルサレムで弁護士事務所を経営している方です。キプロスにはセカンドハウスがあり、ちょうど私が訪れていたときに彼女も滞在中だったのです。

大柄で元気のいい現地の二人に比べ、小柄で落ち着いている彼女。食べる量も、食欲旺盛な現地の二人に比べて、彼女は普通。私とペースが合いました。

皆でわいわい言いながらレストランでフィッシュアンドチップスを食べていたら、会話の流れでポーランドのクラクフ、そしてアウシュビッツの話に・・・。

6年前に私も友人と二人でポーランドのクラクフを訪れていました。現地ツアーでアウシュビッツへも行ったのです。

しかしイスラエル人の彼女はアウシュビッツへは行ったことがないのだとか。実は「行けない」のだと言います。

彼女の両親だけが生き残り、祖父母や周りの人たちすべてが殺されたというのです。

何も言えませんでした。

本当に辛い歴史を背負った人の心に、「負の遺産を見ておくべきだ」などという言葉は酷すぎます。

実は私と友人はポーランドに行く前に、アウシュビッツに行くべきか迷っていました。

というのもせっかく楽しみに行くのだから、アウシュビッツを見ない選択もあると思ったからです。それでも行くことにしたのは、「負の遺産」から逃げているような気がしたから。

実際にアウシュビッツに行ってみると、当時のことを想像するだけでも恐ろしくなるような場面だらけです。

だからスマホで写真を撮りまくっている人のことが理解できませんでした。学校の社会学習にでも使うのだろうか?そんなことを考えながら見学していたのを思い出します。

イスラエル人の彼女と観光客の私たちとは、アウシュビッツへの思いが同じはずもなく・・・。

あまりにも辛い出来事を心に抱えていると、それが実際に起こった場面を直視することが困難になるのではないでしょうか。

人の心はそれほど繊細というか、壊れやすい物なのかもしれませんね。心の深いところにある感情、といったらいいでしょうか。

キプロスで出会ったイスラエル人女性との会話から、深く考えさせられた一瞬でした。

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