最近とても楽しみにしているテレビ番組が、NHK Eテレの「やまと尼寺精進日記」。毎月最終日曜日の18:00~18:30放送。リズミカルな音楽と柄本佑さんの明るいナレーションが始まるとウキウキしてきます。
この番組は2016年からスタート。奈良県桜井市にある音羽山観音寺という尼寺がロケ地です。住職と副住職、お手伝いのまっちゃんの3人が暮らします。彼女たちそしてお寺の日常を紹介するドキュメンタリー番組です。去年はNHK出版から「やまと尼寺精進日記」(¥1,600+税)という本も出版されました。
この番組はけっこう人気があるようです。「やまと尼寺精進日記」で検索すると、この番組について書かれたたくさんのブログが見つかります。みなさん共通して「ほっこりする」とか「癒される」とかおっしゃっています。何だかわかる気がします。
もちろん若い方も含まれるとは思いますが、ブログを拝見する限りは、視聴者の多くは中高年女性ではないかと思います。ちょうど住職や副住職と近い年齢ね。庭に咲く草花に目が行くお年頃?です(笑)。境内に咲く四季折々の花が目に優しい~。
目次
いったい何が面白いのか?
放送開始当初、偶然目にしたこの番組。尼さんが出てくる番組って珍しいな~という感じでした。特別面白いとも思わず、かといって嫌ではないので見続けていたら、いつの間にか大好きな番組になっていたのです。
四季を感じることができる
何といってもお寺を包み込む自然の移り変わりで、四季の美しさを堪能できるのが嬉しいです。花好きのご住職を中心に、お寺の庭に所狭しと咲く四季折々の花。それをまたご住職が見事に生けておられるのがなんとも素敵。
山中のこじんまりとしたこの尼寺。決して立派な日本庭園があるわけではありません。どちらかというとご住職の花好きが高じて、あちらこちらにごちゃごちゃ花が植わっている(笑)といえるかも知れません。でもそれが逆に私たちとの距離を縮めてくれるのではないでしょうか。飾らないご住職たちそのものだからです。
自然を食べる術が学べる
お寺には麓の人たちからいろいろな野菜や果物が届きます。それらを無駄なく使い切る尼さんたち。こちらはその姿勢に学ぶことしきり。毎回何かひとつは「生活の知恵」を授かっているような気分です。お得な番組です(笑)。
この番組が終わると、自分でももっと丁寧に料理しなければと思います。そして2~3日は少しはまじめに食事作りをするのですが、すぐに元のぐうたら料理人に戻ってしまうのが常💦。まったく修行がたりないと反省の繰り返しです。やっぱり山に入らなければダメかな~。
もともと「精進料理」とは「修行に励むこと」そして「どのように作り」「どのように食べるか」を大切にすることだとか。私のように、適当に作ってまあまあの味ならいいや~という精神はけしからん!ですよね、全く。
女子3人の笑い声が楽しい
この番組が楽しいのは、何といっても尼さんたち3人の朗らかな笑い声。料理をしながらケラケラ~。見ていたうちの父などは「何がおかしいんだ?」とつぶやいていましたっけ(笑)。女子のおしゃべりには明るい笑い声がつきものだというのがわからないようです。
よく考えたら、男性のお坊さん・・・例えば禅寺の修行僧も精進料理を作りますが、ケラケラ笑いながら作っているとは思えません。ときどきテレビで見ても、まじめな顔して一生懸命に調理なさっています。まさに修行ですからね。尼さんたちも修行中は違ったことでしょうけれど。
そうであっても、数人寄ればケラケラ、ワハハと賑やかに作業するのは女性群ですね。どちらかというと男性は黙々と動くという感じです。それは精進料理の調理場でも同じかと・・・。
台所に懐かしい雰囲気が漂う
ご住職たちが賑やかに料理をしている調理場。今はやりのシステムキッチンとは違い、懐かしい雰囲気が漂っているのがまた良くて、昭和世代にはたまりません。
大きなアルミ鍋、竹ざる、懐かしい型の電子レンジにストーブなど、どれも大事に使われている様子がうかがえます。ひと昔前の台所はどこもこんな感じだったような気がします。尼さんたちはそれらの調理道具を愛着を持って使っておられる様子。
癒されるけれど、癒す側は忙しい
この番組のファンは、口をそろえたように「癒される」とか「ほっこりする」といいます。確かに山寺の尼さんたちの笑い声や、美味しそうな料理を見ているとこちらも楽しくなります。でもご住職がどこかでおっしゃっていたようですが、「なぜ自分たちの何の変哲もない普通の生活が、これほど受けるのか今もわからない」と。
そうなんですよね、お寺の方たちにとってはいつもの暮らし。朝起きてラジオ体操して、お経をあげ、食事の用意。精進料理を食べに来る人や宿坊客などがあると、それはもう調理場は大忙し。おまけに台風あり鹿の訪問もありと、のんびりなんてしている間もないほどです。
もちろんお寺としての本業もあります。檀家がないとはいえ、それだからこそより多くの人に訪れてもらえるように、季節の行事を丁寧に催しておられるのではないでしょうか。お寺の維持って本当に大変だと思います。
実はうちのすぐ隣は浄土真宗のお寺。檀家がたくさんあるので、観音寺とは状況が異なります。でもどこのお寺も「忙しい」のは共通しているようです。隣のお寺の場合、365日寺役といって、亡くなった方の命日にその檀家を回りお経を読みます。これが大事な収入源ではあります。また檀家やお客さんがしょっちゅう訪れるので、境内の手入れもそれなりにしておかなければなりません。
週末は法要が入ることが多く、また突然入ってくるのがお葬式。これだけは計画が立てられません。お坊さんの家族旅行はなかなかできそうにありません。でも最近の若いお坊さんは、日程をうまく調整したり、代役を頼んだりと、家族サービスもされているようです。その方が良いですね。
音羽山観音寺からはちょっとそれましたが、お寺ってかなり忙しいのです。外観の雰囲気からみると、観光客などにとっては「落ち着く」とか「癒される」などと言われるお寺。でもそれを維持する側は「癒される」とは程遠いのではないでしょうか。
観音寺の場合、一般のお寺(檀家のある)と違い、「お墓じまい」とか「無縁仏」とかという現代のお寺と檀家との間に生じる問題はないでしょう。それだけでもあの尼さんたちは純粋に「精進」できるような気がします。
仏教本来の教えを人々に伝えるには、檀家の無い小さなお寺の方が良いのかも知れません。ただし大小を問わず、寺を維持しなければなりませんから、それなりの努力を要します。美味しい精進料理やゆずジャム販売はその一端を担っているのでしょう。いくら山中の尼寺とはいえ、全くお金を使わずに暮らすことは無理です。
尼寺~暮らしのペースは変わらず
番組放送によって人気が出てきた音羽山観音寺。当然全国からの訪問者が増えているようです。予約制の精進料理もすでに数か月後までいっぱいだとか。みんな食べてみたいからね~。私もいつかいただきたいとは思っていますが、待てるかな?
参拝客の数は増えても、尼寺の基本的な暮らしが激変しているわけではなさそうです。ほっとします。あのお寺にたどり着くまでの細い急な坂道。そのお陰?で、大きな観光バスが来ることはできません。だから団体客がどっと押しかけることは無理。ロケーションのデメリットがメリットにもなるわけです。
相変わらず番組の放送は月一回だけ。毎週見たいと思いますが、やはりお寺の本業にさしさわりがあると困りますしね。また尼さんたちと撮影スタッフ共に準備が大変でしょうから、まあ月に一度の楽しみで我慢します(笑)。
日々の暮らしが大切だというお手本
この番組を見ていると、日々の暮らしがいかに大切かを考えさせられます。毎日の暮しの連続が人生だという、当たり前だけれど忘れがちなことに気づくのです。
尼さんたちが野菜を刻む姿を見ていると、自分も少しでも丁寧な暮らしを心がけようと思うのです。そしてこの番組の魅力は、尼さんたちの飾らない毎日の暮らしを伝える内容だからだと思います。
さて、また一か月後が楽しみです。
☆番組詳細:やまと尼寺精進日記